珍しく映画の感想


展示の最中だったのでこちらへは書いていませんでしたが、年明けに名古屋シネマテークで久しぶりに映画を観ました。
映画のタイトルは「人生フルーツ」。
日本住宅公団に在籍され、高蔵寺ニュータウンの開発を手掛け、実際ニュータウンの中に50年間住まれた建築家、津端修一さんと奥様の英子さんのドキュメンタリーフィルム。

ひとことで言うと、観て良かったです。今後観る機会がある方にはおすすめしたいです。

自然を取り入れた住まいの中で「何でも自分で作る自分でやる」暮らしは現代人の憧れですが、この映画は、単に「スローライフの可愛らしい老夫婦の愛情物語」ではないところに深みがあります。

都市近郊の町、しかも住宅集合地の中での豊かな農的暮らしはなかなか出来ることではなく、ある程度のお金とインテリジェンスと健全な肉体と精神と…頑張っても入手が難しい条件が備わっているゆえのハードルの高さがあります。
それは修一さんの描いたニュータウンの理想の設計図が、台湾の住宅地へのアドバイスが、実際は実現出来なかったことと同じ意味を持つのかもしれません。
理想とする考えを実現する力を持つ人と、経済社会の中で形成されていくしかない多くの人の暮らしや開発側の事情には隔たりがあるのです。

それならと、エリート街道をおりて実践者になった修一さんと、それについて行った英子さん。
私たちが現在生きる社会の中で、高く見えるハードルは超えたるだけでなくくぐったって周り道したっていい。
自身の周辺からこつこつとでも、世界を変えていく勇気とヒントがこの映画の背景にはずっと流れていました。

共に生きる人、関わりを持った人を大切に思う姿勢には静かな優しさがあり、そこもみどころのひとつです。

観た直後より、その後の生活の中でじわじわきますよ。
年とったからとか時間がないからとか、言い訳できないなぁ。
今の生活の中でもやれることがまだまだある。
未来を生きる私たちに、楽しい悩みはいつまでもつきません。

そういえばこの映画って東海テレビで放映された番組を再編集したものなんですね。
とある重要なシーンでの映像に私はショックを受けてしまったのですが、制作側の覚悟というか意志の感じられる場面でした。
そういうのも良かったです。

名古屋での上映は、2月3日(金)まで。
シネマテークにて。
名古屋シネマテーク 上映スケジュール